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2015/11/09

『就活を考える008』 相模女子大学 湧口清隆教授

~ポイントは“人間臭い”仕掛け~
学生にとって、私たち大人ができることは、たくさんのことを経験するための「場作り」であり、良くも悪くも「現実」を見させてあげることだと思います。

安定志向の学生は大手企業を選ぶ傾向にありますが、ひとつのモノが世に出るまでには、多くの人・企業が関わっています。そのような社会のしくみを“人”が学生一人ひとりに伝えることで、学生の視野は広がり、働くことのイメージもしやすくなると思います。そうすれば、学生たちは企業研究や業界研究にも熱が入り、楽しく取り組むことができるはずです。

学生が“楽しい”“やってみて良かった”と感じるような仕掛けをすることで、学生自らの力で次のステップに進むことができます。それは学生自身も自分のベースを固められる機会となり、就活においては面接でイキイキと自分のコトバで話すことができるようになることにつながります。

“人間臭い”触れ合いがあるからこそ、意味のあるコミュニケーションの時間にすることができるのです。

~プロとの差をナマで知る幸せ~
私のゼミでは学生に社会を知ってもらうため地域と連携していろいろなプロジェクトを進めています。私が引き受ける形で、ゼミとは別に学科横断型で1年生から参加できるプロジェクトも用意しています。

その一つにホテルや駅そばチェーンとコラボ・メニュー開発があります(注)。
企業と学生が話し合って、現状分析を行い、課題や社会のトレンドを見つけて、フェアやメニューのコンセプトを打ち出します。ホテルでは6チームが競争する形でコンセプトを提案しました。一方、駅そばではチームは一つで、企業に納得してもらえるまで3回もプレゼンを行いました。そのあとで、開発チームの学生はこのコンセプトに沿ったメニューを考案します。
“このメニューを考案した理由は?”“コストはどうか。”“お客様に喜んで頂けるポイントは?”など料理長や社長を筆頭とする役員へプレゼンし、試食をしてもらうので、学生は緊張の連続です。そこで『プロ』から、アドバイスや提案、修正などフィードバックを受けます。それを繰り返した後、思いのこもった料理をようやくお客様にお届けすることができるのです。

自分たちの手によって生み出し、試行錯誤を繰り返す。そして結果として、お客様の喜ぶ姿を実際に見ることができる。すべての過程を体験したからこそ味わえる達成感は何とも言いようがないでしょう。

学生にとっての最大の学びは『プロ』との違い、社会の厳しさを身を持って経験できるということではないかと思います。

『プロ』の考えと自分の考えとの違いはどこなのだろうか?
学生という立場と社会人という立場の責任感の違いをはっきり認識することができる貴重な時間となります。
それは、失敗が許される教育の場と、失敗したらすぐにお客様が離れるプロの現場との違いです。

このようなプロジェクトを通じ、プロとの差を感じたことで、企画・開発という仕事に魅力を感じその道に進んだ学生もいます。
これは実際に世に出るプロジェクトだから起こることなのです。企業の方だって手を抜けないから本気のフィードバックをしてくれます。それが学生にとって大いに意味を持つのです。。

企業の方には、企業や業界全体を学ぶことができたり、1日中社員の仕事を同行したりできるなど、“実際”の仕事を体験できる数週間にわたるインターンシップを行っていただきたいと思います。私自身、20数年前にフランス国鉄貨物局で2ヶ月半、そのようなインターンシップを体験させてもらって大いに勉強になりました。ストーリーで体験できることが大切だと強く感じます。
大学にも同様のことが言えます。就活のためのキャリア支援にとどまらず、1年生のうちから多くのことを経験できる場を作り、継続的に学んでいくことができる環境を作ってあげてほしいと思います。

すべてがwin-winになることができる取り組みを考えていくことでよりより社会になっていくと信じています。

~あなたは結果から何を読み取る?~
まず学生にはいろいろ経験を積んでほしいです。
就活目的にとどまらず、自分のプラスにするために、インターンシップも学校のプログラムもどんどん積極的に利用してしまっていいと思います。

たくさんの人と関わり、“人間臭さ”を味わうことで必ず新しい発見があるはずです。
それは自分自身の選択肢の幅を増やすことにもつながるし、“自分らしい”判断基準の材料の積み重ねにもなります。すべてがひとつひとつ自分の糧となり。そしてそれはある時、自分でも思ってもいないようなカタチで役に立つのです。

これからは、自分の求める結果はみんなにとっても幸せな結果につながっているのだろうか?ということを考えて見て下さい。
すべての物事は「帰結」しているはずです。

ひとりひとりが帰結の視点で考えることができれば、これからの日本は今よりもっと明るくなると信じています。

(注)小田急ホテルセンチュリー相模大野「グリルキッチン ボン・ロザージュ」とのコラボ企画、「箱根そば」50周年記念メニュー第3弾。詳細は以下のウェブサイトより。
http://www.sagami-wu.ac.jp/features/industry/
http://www.odakyu-hotel.co.jp/century-ono/pdf/nippon_rediscovery_fair.pdf
http://www.odakyu-restaurant.jp/hakonesoba50/

◆湧口清隆教授プロフィール◆
一橋大学大学院商学部研究科で単位修得後、博士(商学)取得。国際通信経済研究所で研究員、九州大学大学院比較社会文化研究院客員助教授。2004年相模女子大学学芸学部人間社会学科専任講師。同助教授、人間社会学部社会マネジメント学科准教授を経て2011年より教授。2008年~2012年社会マネジメント学科長。
世の中の様々な制度や仕組みづくりに関心を持っている。そこには理論や理念だけでなく、現場の声や関係者の利害、そして制度のつくり手の信念も反映されていることを感じる。理論と実践(「人間性」)という観点から、経済政策の研究を行っている。

◆編集後記◆
湧口先生がいらっしゃる相模女子大学では農業に携わるプロジェクトも行っています。参加した学生の中には、地元のために土日も返上して仕事をする市役所の方の姿に感銘を受けてその地域の市役所に就職する方もいらっしゃるそうです。
安定志向で就職すること、やりがいをもって就職することでは思い描く未来が全く別のものだということは皆さん想像ができると思います。皆さんならどちらの道を選びますか?

どちらの道を選んでもその仕事において“やりがい”や“楽しさ”があってこそ、日々の生活は充実できるものだと思います。では自分はどんな時に楽しいと感じるのだろうか?それを知るには新しい環境にどんどん飛び込んでいくこと。いろんな経験をして多くの人と話す。そうすると色んな角度からの自分を知ることができます。
それが多ければ多いほど、“こっちは好きだけど、あっちは向いてないかも”など『自分』が見えてくるはず。
それは就職した後だって一生、磨き続けることができるのです。

3年後の自分。あなたはどうなっていたいですか?

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