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2015/03/11

『就活を考える 001』 法政大学 土肥将敦 准教授

~学生も企業もハザマの中で~
 就活スタートが後ろ倒しになった中、学生は講義の出席率を重視されインターンシップなどを行う自由な時間が少なくなっている。
企業は就活期間が短くなったため、インターンシップの実施を加速させている。
学生も企業も大忙しだ。
 合同説明会開始とともに学生も一気に就活モードに入る。そして見えないレールに乗った学生達は機械的に企業との出会いを繰り返していく。
これが本当に学生と企業の“幸せな出会いの場”と言えるのか。
 働くことの真の目的を、就活を点ではなくキャリアの通過点と考えた時、お互いにとってより満足のできる就活とは?を考えたい。

~多様な就活があってもいい~
 学生たちは企業目線で行われるインターンシップに、もやもやを感じているのではないか。
自由な時間が少なくなる中で本当に意味のあるインターンシップなのか?企業のリアルな部分を体験できるインターンシップ内容になっているのか?
学生の捉え方は思っている以上に冷静で深刻だ。
中にはインターンシップの結果が本採用に影響することを心配し、第一志望の企業にインターンシップすることを躊躇する学生もいる。真剣にゼミなどで学んでいる学生達には、予想以上に時間はなく、夏休みや春休み等でさえ、なかなかまとまった時間はとりにくい。その上、昔に比べて大学側も講義への出席を重視するようになっており、学生達が思い切って長期的なインターンシップに参加できる環境があるかと言えば否である。
 対照的にドイツ等の大学では基本的に出席は問われない(これが必ずしも良いとは思わないが)。その分、インターンシップなどを数か月実施したのちに就職先を選ぶことができる環境がある。
 「内定取得後にインターンシップしたい」と言うのが学生のリアルな声だ。
学生は就活真っ只中では緊張もしているし、なかなか落ち着いて振り返る余裕がない。内定取得後に改めて客観視できる状態でインターンシップをし、最終決定をしたいようだ。
これは学生と企業間のミスマッチも減るだろうし、離職の可能性も減ると思われる。
 インターンシップはうまくやれば企業と学生の想いを結びつける有効な手段となるが、それでも現在の日本の状況を考えれば、多様な選択肢のうちの一つとして考えるべきだろう。
 そして何より大切なのは、大学入学後から、少しずつキャリアというものを考えさせるような「場」をあの手この手で、企業や大学(もしくは教員)が工夫して創出していくことだ。学生は、押し寄せてくる就活情報に流されることなく、自分らしいオリジナルでユニークな就活を目指して欲しい。

~大切にしたいマインド~
 より幸せな就活とは?と考える時、お互いに大切にしたいことを明確にする必要がある。
 「あなたの企業のミッションは?ビジョンは?価値観は?」
 「あなた(学生)の価値観(大切にしたいこと)は?」
これは働くことに関してだけではなく、生きていく中でとても大事な指標のひとつになる。
 ドイツでは価値観をマッチングする求人サイトも登場しているようだ。(参考URL https://www.talentsconnect.com/)
 価値観が共有されている企業は個々のパワーが結集され、より大きなパワーを企業にもたらす。

 学生と企業。幸せな出会い。“就活にもイノベーション”を起こすタイミングかもしれない。

 それには大学、学生、企業のそれぞれの協力なくしては実現できない。企業には学生達に「大学で何を考え、学んで来たのか」についてもっと尋ねてもらえたらと思う。
 私の研究テーマの柱のひとつにCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)がある。このCSRというのは、「企業活動のプロセスの中に社会的公正性や倫理性、環境への配慮等を組み込んでいくこと」を指しているが、新しい人材の採用活動やインターンシップなども単なる人事や人材獲得活動としてではなく、広くCSRとして捉えることも大切だ。そうするとインターンシップの企業内での位置づけ方も変わっていくかもしれない。
 大学側も企業と積極的にコミュニケーションを取るよう変化していく時期だと思っている。
例えば、現在日本で行われている1週間程度のごく短いインターンシップではなく、アメリカやドイツのようにある程度専門性の高い職種での長期に渡るインターンシップが広がってくれば、大学での教育内容がストレートに問われることになるし、また企業と学生の専門性のマッチングは重要な課題となるだろう。いずれにしろ、大学と企業が新しい試みをチャレンジする段階にきているといえる。
 学生について言えば、大学時代にインターンシップ等への挑戦はもちろん、ゼミなど厳しい環境に身を置き、専門的な知識とともに対人的なコミュニケーション能力をより磨くなど修行してほしいと思う。

◆土肥将敦先生のプロフィール◆
一橋大学経済学部、一橋大学大学院商学研究科博士後期課程修了。2009年高崎経済大学地域政策学部准教授。2014年より法政大学大学院人間社会研究科 准教授。
学生時代、環境問題等の社会的な課題に対し社会運動のような形でのアプローチに限界を感じていた。その中で“ソーシャルイノベーションを起こす人/社会的企業家”のコンセプトに出会う。
社会問題をビジネスの力で解決しようとする時、私達が日常関わっている企業こそがこういった課題に主体的に関わっていくことが必要と考え、現在のCSR経営に研究に至る。

↑土肥先生の共著「ソーシャル・エンタプライズ論」


◆編集後記◆
就活のスタートが後ろ倒しになり誰しもが試行錯誤しています。
これは今に限ったことではないかもしれませんが、お互いの思いが共有できる就活や仕事であれば、そこから得られるもの、発見できることはたくさんあると思います。社会人歴を重ねるごとに、働くことで得られる経験や知識、人間関係は自分が成長できる場だと実感しています。私自身、就活時は漠然とした想いしかありませんでした。しかし想いだけはありました。それに火を灯してあげられるのは企業だと思うのです。企業の思いを知り、心が動かされます。それには学生も、常に“どうありたいのか?”を問い続けること、そして広い視野をもつことが大事なのだと今回の土肥先生へのインタビューを通じて改めて考えることができました。

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